山梨CKD医療連携ニュースレター No.1 2016.09

山梨CKD医療連携ニュースレター No.1

 いよいよ2016年4月よりCKD病診連携医制度が始まりました。この制度は、山梨県慢性腎臓病予防推進事業として行われております。CKD医療連携協議会と各地区医師会の共催した講習会を受講し、申請を出された149名の先生方を対象に、県医師会長と山梨県知事からの認定証が発行されています。CKD患者を早期に拾い上げてその重症化を食い止めるために、非常に大切な仕組みです。患者—開業医—専門医—保健に関わるすべての医療関係者にとって、有意義な仕組みができました。山梨慢性腎臓病対策協議会では、CKD病診連携医制度を広く知ってもらう目的で、CKD医療連携ニュースNo1を発行させていただきました。今後、継続して発行させていただく予定です。医療の現場からのCKDに関連するあらゆるニュースをお届けします。まずは創刊号をお楽しみください。

 

CKD医療連携ニュースレター発刊に寄せて

CKD医療連携ニュースレター発刊に寄せて 山梨県福祉保健部健康増進課 岩佐景一郎先生

 糖尿病性腎症をはじめとする慢性腎臓病(CKD)は、症状が進行すると人工透析を必要とする疾病です。平成22年には本県における糖尿病性腎症による新規透析導入患者数(人口10万対)は日本で最も高く、その医療費についても非常に高額となっていることから、CKDの早期発見や早期治療の重要性が指摘されているところでした。
 CKDの診療についても様々なエビデンスにより日々進歩をしており、軽症の状態から早期に適切に介入をすることで、一定程度透析導入を回避できるようになってきていると聞いております。
 しかしながら、軽症の方を含めるとCKDの患者数は非常に多く、そのすべてを腎臓専門医が診療することは困難であり、現実的ではありません。日々の診療を担っていただいているかかりつけ医の先生方と腎臓専門医の先生方が有機的な連携を取っていただき、適切な介入をしていくことで、重症化を未然に防ぎ、ひいては透析導入を遅らせることができるのではないかと思います。
 そういった背景の中で、山梨県ではYCKDIの原口代表や山梨大学医学部の北村教授をはじめとして多くの方々のご協力のもと、慢性腎臓病予防推進事業を平成27年度から開始したところです。
 慢性腎臓病予防推進事業の中では、腎臓病専門医とかかりつけ医の先生方の連携を円滑にするために紹介基準や紹介シート等を作成するとともに、CKD病診連携医認定研修会や腎臓専門医会議を開催する中で、県内の関係する先生方が共通の認識のもと活動できるようお手伝いをさせていただいております。おかげさまで本年3月現在で149名の先生方に病診連携医となっていただいており、基準に基づいた紹介も増えていると聞いております。
 この取り組みは、一時的なものではなく長期的に続けていくことが何より重要です。関係者みんながこれからも相互に顔の見える関係性を維持していくことで、本来の目的であるCKD患者さんの重症化予防が可能となるように考えております。
 このニュースレターも長期的に関係者がよい関係を続けていくためのものだと聞いており、こういった取り組みを通じて、ますます関係する皆様の連携が充実したものとなることを願っております。

 

2016年度CKD病診連携医認定研修会開催される!

山梨大学医学部第3内科 教授 北村健一郎先生「慢性腎臓病(CKD)治療戦略  〜山梨県CKD病診連携システムについて〜」の講演がありました

 2016年7月19日(火)山梨県慢性腎臓病予防推進事業における、2016年度(平成28年度)の病診連携医認定申請資格を得るための研修会が、山梨県立男女共同参画推進センター(ぴゅあ総合)にて開かれました。研修会参加者数は18名で中巨摩、北巨摩、北都留医師会、山梨大学医師会よりご参加がありました。
 参加者は、講師の北村先生のご講演を熱心にメモをとり、「とても勉強になった」「GFRを使う意味がよくわかった」「腎臓専門医と連携がスムーズにとれそうだ」などの感想がきかれました。
 今回の研修会に参加の先生全員が、CKD病診連携システムへの参加を希望し病診連携医認定申請をされました。近々、山梨県及び山梨県医師会より認定証の交付がされる予定です。今回交付する認定証の認定期間は、認定証交付日から平成30年3月31日までとなっています。
 なお、CKD医療連携協議会と各地区医師会が共催した講習会(2015年開催)を既に受講し、県医師会に申請を出された先生方を対象に認定証が交付されています。この認定証をお持ちの場合、認定期間は平成28年3月15日より平成30年3月31日までとなっています。連携医認定制度は山梨県慢性腎臓病予防推進事業の一環として創設され更新制となっています。既に認定証をお持ちの先生方は、2017年度に開催予定の更新研修会を受講し、引き続き病診連携医としてご協力いただけますよう、よろしくお願いいたします。

 

シリーズ   専門医紹介

白根徳洲会病院腎臓内科 奥村こずえ先生

 シリーズ第1回は新たにYCKDIにご参加いただいた白根徳洲会病院の奥村先生をご紹介します。
南アルプス地域の新たなCKD医療の新たな拠点として注目されています。

 この度、山梨県CKD病診連携システムの腎臓病診療施設に加入させていただきました、白根徳洲会病院腎臓内科の奥村こずえと申します。
 平成14年に順天堂大学を卒業後、同院で内科研修を経て腎高血圧内科に入局いたしました。大学では主に病棟、透析(血液透析、腹膜透析)業務を行い、二人目の子供の出産を機に平成24年4月に故郷でもある山梨へ戻ってまいりました。同年7月から白根徳洲会病院に勤務しております。入職当時は透析患者も33人ほどでしたが、近隣の先生方のご紹介もあり、今では透析患者も66人に増え、外来患者も増えてきており、日々仕事に邁進しております。当院では、保存期腎不全からシャント作成、透析導入、維持透析まで全て行っております。シャント作成は、院長である血管外科の石川真先生が行っており、新規作成だけではなく、その後のシャントトラブルにも対応しております。最近では他施設のシャントトラブルの患者さまのご紹介も増えてきております。
 先日イオンモールで行われました一般市民を対象としたCKDの啓発イベントに参加させていただいた際に健康相談コーナーを担当させていただきました。そこでの質問で一番多かったことは、「腎臓って何ですか?」「腎臓って胆嚢のことですか?」といった驚くような質問でした。私は改めて県民の皆様へのCKDに対する正しい知識の普及の必要性を強く感じました。当院では腎機能障害にて初診でいらした患者様にはパンフレットを使用し腎臓とは・・・というところから説明をしております。そして必ず、透析の説明も行います。
   透析というのは患者様本人はもちろんのこと、そのご家族の生活や人生が変わってしまうほどたいへんなものであります。そのことをCKDの患者さまに早い段階から理解していただくことはとても重要なことと考えております。今後、できる限り透析導入を遅らせることや回避することができるように専門医として診療していきたいと思いますのでよろしくお願い致します。

 

シリーズ  専門医に聞く

vol.1 山梨県立中央病院 副院長 腎臓内科  神宮寺 禎巳先生

Q1.CKD医療連携の紹介基準によると高齢者でもeGFRが40ml/min/1.73u未満で専門医に紹介することになっていますが、例えば80歳でeGFR38 ml/min/1.73uとかでもやはり紹介した方が良いでしょうか?

腎機能は、特別の腎疾患がなくとも年齢と共に低下しますが、残り少ない人生を大過なく過ごせるだけの余力があれば良いということで、CKDガイドラインでは、年齢とともにeGFRの紹介基準値(カットオフ値)を引き下げています。とは言え、80歳のeGFR平均値は55前後ですから、この方の38 ml/minという値は生理的な腎機能低下とは言えません。やはり腎臓専門医に紹介していただくのが宜しいかと思います。ただ年齢的には比較的軽度の腎機能低下ですので、蛋白尿が微量以下の場合には紹介を見合わせることも可能です。ただし、eGFRの低下が生理的な範囲を超えて進む気配があれば、速やかに紹介していただくことが条件となります。

Q2.近頃eGFRが低下してきた患者さんがいます。専門医に紹介したいのですが何か紹介の時の注意点はありますか?

先生方には、紹介基準を満たすCKD患者さんを出来るだけ数多く紹介していただきたいので、そのためには紹介の手間を省くことが重要です。処方内容につきましては、患者さんのお薬手帳で情報をいただければそれで結構です。ただ、検査値につきましては、時系列でのクレアチニン(あるいはeGFR)の推移が大変役に立ちますので、ご面倒でも情報をいただきたいと思います。さらに、CKD連携はどのような形を望まれるか、@診察後にお戻しする、A主治医を替わる、あるいはB併診させていただく、のいずれかをご教示ください。

Q3.10年以上診ている75歳の心筋梗塞の既往のある高血圧、脂質異常症の患者さんです。病院血圧で125/75前後に押さえていますが、近頃、腎機能が急速に落ちてきました。何かアドバイスをもらえませんか?

腎機能が急速に低下する場合は、是非、早急に腎臓専門医にご紹介いただきたいと思います。脱水による急性腎不全、血管炎や骨髄腫による急速進行性の腎不全など、見逃してはいけない病態が潜んでいる可能性があります。これらの病態は、早期に対応することで予後が大幅に改善する可能性がありますので、早期にご紹介いただくことが大変重要です。

 

現場を訪ねて

vol.1 韮崎市役所保健課 保健師 内藤静香さん

第1回は韮崎市役所保健課からのレポートです。
韮崎市で平成27年度から本格的にCKDの予防に取り組み特定健診にもeGFRを採用しています。
活動の経緯と実情を保健師内藤静香さんにお聞きしました。

Q1.韮崎市の現状はどうなっていますか?

本市における糖尿病患者は年々増加し同時に医療費も急増しています。総合健診結果からは高血糖者が全体の4割を占め(図1)、その中には高血圧等の併発疾病や腎機能低下の疑いのある者がみられます(図2)。今後糖尿病の発症予防や重症化を防ぐためには一人ひとりが正しい知識を得て、食生活を始め運動・喫煙・飲酒等の生活習慣を改善し自己管理能力の向上を図ることが重要だと考えています。

Q2.どんな対策を取っていますか?

市では昨年度から健診時クレアチニン値・eGFRの測定を行っています。eGFRの意味や他の検査項目との関連性を指導し、合併症や重篤な疾病の発症を防ぐ必要があります。そこで、まず私たちは外部講師を招きCKDに関する勉強会を保健課で行い内部の共通認識を形成しました。

Q3.市民への直接の働きかけはどうしていますか?

CKDを認知してもらうために2年連続で糖尿病予防講演会(講師:原口内科・腎クリニックの原口和貴先生)を開催しました。今年のテーマは『知って、学んで、伸ばそう、健康寿命〜糖尿病について知ろう!』で、7月10日(日)韮崎市保健福祉センター会議室で開催しました。
@糖尿病治療の目標は“健康人と変わらない寿命を全うする”である。
A糖尿病は膵臓の機能が半分になると発症するが、それ以前の生活習慣が大きく影響する。
B合併症の自覚症状が出てからでは自己コントロールは非常に難しい。
C毎年健診を受け早期に治療につなげることがとても重要である。
という内容でした。講演会参加者から「食事を改善し運動に取り組み体重が減少したが、HbA1cの数値が下がらない」「血圧が高いため多種類の薬が処方され服用が大変である」など日頃心配していることに対し非常に多くの質問が出されました。
 終了後のアンケートで・健診を毎年受けよう・塩分を控えたい・薬を正しく飲むなど改めて日頃の健康管理の積み重ねの大切さを理解できたと感想をいただきました。糖尿病予防に関する普及啓発の必要性を改めて感じました。

 

編集後記

 
 

編集後記

3月から本格的に始まったCKD医療連携の制度ですがあっという間にもうすぐ半年が過ぎようとしています。3月に山梨県健康増進課が行ったアンケート調査結果では開業医の先生方からのCKD医療連携制度に対し高い期待度が寄せられていることが明らかでした。この創刊号は行政や専門医が期待に応えるべく行っている活動の報告を中心に編集しました。今後、ニュースレターではCKDに関わる種々のニュースを取り上げていきたいと思います。日常のCKDに関する疑問点、ご意見、取り上げて欲しいニュースなどお気軽に事務局にご連絡ください。(KH)

 
 

2016.2.28 世界腎臓Day2016in山梨 イオンモール甲府昭和にて

 

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