活動報告 山梨慢性腎臓病研修会2015


 
 

山梨慢性腎臓病研修会2013 平成25年3月10日(日)13時〜 山梨県立中央病院 2階多目的ホールにて

 2015年の山梨慢性腎臓病研修会は、平成27年4月5日に山梨大学の臨床大講堂で開催されました。講演は5演題あり、CKD診療における多職種の取り組みを最新の事例を通じて学ぶことが出来ました。

以下に各々の講演の大まかなまとめと感想を記載させて頂きます。

 2013年度には山梨県の27市町村でわずかに3市町村のみがeGFRを特定健診検査項目に採用していたが2014年には11市町村に増えました。この事が医療現場でどのような影響を持ち、受診者はどのように取り扱われたかは市町村、健診機関、医療現場のCKDを取り扱う担当者の関心事です。原口先生は健診機関より精査の依頼のあった52名と検診結果から自己判断で受診した29名を検討して以下の事を報告しました。1)CKDG3aではGFRはクレアチニン再検査およびシスタチンCの併用によりG2以上と判断されるケースが多い2)蛋白尿、eGFR低下を主訴とする場合は各々70%,78%で有効な検査/治療が行われた。この発表はeGFRを特定健診に導入する事の重要性と注意点について受講者に印象づけるものでした。

 

 向山先生の御講演ではCKDの日常診療で多く使われるアンギオテンシン変換酵素阻害剤、アンギオテンシンU受容体拮抗薬、カリウム吸着薬などを取り上げて薬理学的な作用機序から噛み砕いて説明をしていただきました。「“ちょい足し”アドバイス」というご講演のタイトルにある通りに看護師などがCKDの患者さんに療養指導をする際に非常に役に立つ実践的な情報を提供してもらい大変為になりました。患者さんが飲みにくくて苦労する尿毒素の活性吸着剤の飲み方の指導もありました。

 

 南アルプス市は人口約7万3千人の山梨県西部に位置する市です。現在、透析医療にかかる負担は県下の市町村と比較しても多い方でありCKD対策は優先すべき課題となっています。南アルプス市では早くから血清クレアチニン値、次いでeGFRを特定健診の上乗せ検査項目に採用して市民への受診勧奨や健康教室への参加の呼びかけを行っています。南アルプス市健康増進課の清水さんは健康教室やフェスタ等での減塩の取り組み、CKD予防教室,栄養指導などの様子を紹介して,行政がCKD対策を進めるうえでの方法と問題点などを分かり易く解説してくれました。今年からeGFRを特定健診に取り入れる市町村の保健師さん方の参考となったと思われます。

 

 堀岡先生はまず各市町村での特定健診へのeGFRの導入状況について触れ、もっと多くの市町村での導入が望まれると話されました。次に山梨県の透析の現状にふれて1)糖尿病を原因とする透析導入が日本で一番高率であること2)透析患者さんの一人当たりの医療費は年間約500万円であり全体では国民健康保険の総医療費のおよそ10%を使っている事を話されました。最後にCKD普及啓発活動、慢性腎臓病対策協議会の設置、病診医療連携の体制整備、保健指導者、医療従事者のスキルアップのための体制整備など極めて重要な施策を列挙して山梨県として取り組みを加速させる必要性を話されました。YCKDIコメディカル研修会は今年で第5回になりますが山梨県から御講演は初めてでした。今回のコメディカル研修会には例年以上に市町村の保健師さんの参加が目立っており県の対策が本格化しつつある事が感じられ心強く思われました。

 

 2014年9月に教授に就任された山梨大学腎臓内科の北村先生は昨年よりYCKDIの共同代表になっています。今回の御講演では先生が熊本で進めてこられた行政と一体となったCKD医療連携について話されました。熊本市の人工透析患者の人口に対する割合は全国の1.4倍で長年全国の第一位という不名誉な記録がありました。北村先生は熊本市のCKD対策推進会議の中心メンバーとして活躍され尿試験紙の配布などの地道な啓発活動に加えて,CKD病診連携プロジェクトで病診連携紹介基準を作成しこれに沿った患者紹介の流れを構築しました。この運動には熊本市,医師会,熊本県栄養士会、歯科医師会,薬剤師会,看護協会、健診機関,腎臓内科を有する公的病院、更には保険者なども加わってオール熊本の体制が組まれついに透析導入患者数の劇的な減少を成し遂げました。北村先生は今回山梨県の状況を踏まえつつ同様の仕組みを作ろうと努力されています。先生の掲げられた山梨県CKD対策の目標は『5年間で新規人工透析患者の導入数を10%減少させる』です。この目的のために既に2014年にCKD医療連携協議会が発足しており紹介基準,再紹介基準,専門医療機関の名簿作りなどが進んでいます。腎臓専門医とかかりつけ医の2人主治医制によるCKD進展阻止のための取り組みが山梨県でも今将に始まろうとしています。お話の内容は具体的ではっきりと実現可能性を感じる事が出来ました。研修会の参加者全員が今後の進展に強い期待を抱きました。

 

 

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